その昔 小さな集落に貧しい人々が身を寄せ合って生活をしていた。
わずかな畑は干ばつによって緑と言える様な物はすでに無く、
砂漠と言えるようになっていた。

村の若者が訴えた「皆で豊かな土地に行こう、途中には大きな障害があるだろう。
しかし必ず豊かな大地に行く強い信念を持って立ち向かえば必ず叶えられる。」
若者は、村の人々を説得した。荒れ果てた大地を捨て、村人達は若者に託して
旅人となった。旅は長く厳しい旅となった。空腹、水を求め、旅は続いた。

苦しい旅が続くと不平不満が出てきた。挙句の果てはリーダーの
悪口を言い始める者も出てきた。
「若者の言うことを聞いたから苦しい」「リーダーが悪い」また、醜い争いも絶えない。不平不満はやむことはなかった。

苦難の旅は続いた。一人また一人と脱落者が出た。
若者は言った。「豊かな土地は必ずある。この私の足で必ずたどり着き、
この手でみどりの草に触れる、強い信念を持って必ずたどり着く。」
若者は、強い精神力と怯まない強い信念を持っていた。
求める心は一層強く感じた。

何日も何日も砂漠をさまよい、しかし若者は苦難になるにつれつ酔う信念と
求める心は一層大きく育っていった。気が付けばこの苦難な旅に多くの村人が
脱落して、若者一人になっていた。大勢の者は途中で脱落していった・・・

若者は旅を続けた。すると砂漠の向こうに土色をした家々を見つけた。
空腹と喉の乾きで陽炎のように見えた。やっとのおもいでたどり着いたが
もう一歩も歩けない。しかし若者は身を引きずって歩き、一軒の家の戸を叩いた。

扉が開くとそこには老人が立っていた。「ご老人、私に水を一杯下さい。」
若者は深々と頭を下げた。老人はやさしい顔で言った。
「若者よ よく来た。冷たい水を飲みなさい。」老人は一杯の水を与えてくれた。
そして小さなやさしい声でささやいた。「きっと緑の大地にたどり着ける。その方法は、若者よ、自分自身が一番学んだであろう。
私は方向を教えてあげよう。」そう言って老人は北を指差した。

この後に若者は、緑の大地にたどり着き、畑を耕し、幸せな日々を送り、
豊かな暮らしをした。しかし若者は学んだ。多くを学んだ。
『決して諦めることなく、強い大きな信念と求めるものを求めに求め、
人を非難することなく、不平不満を言わず、苦しい時こそ自分の足で進み、
我が手で戸を叩き、老人に水をいただき、多くをこの老人から学んだ。』